2022年2月13日 運指(その2)

 

「そろそろ日記を更新しなきゃ・・・」と思って新しいことを書こうとしたら、前回書いた分に書き足したいことが浮かんできたので、今回はそのことを書きます。なので今回も上級向けです。

 

* * * * *

 

「あ~でもない、こ~でもない、」と自分に合った運指を色々考え、その中の一つを弾き込んだけれどもどうも上手く表現できず、また別の運指に訂正することはしばしばあります。

 

その際、テンポが遅めの曲やそれほど難しくない箇所の場合はすぐに直せます。しかしそうでない場合、テンポの速い曲中の素早いパッセージなど、弾き込んで弾き込んでとうとう身体が覚えてしまった箇所などは、頭で分かっていても身体が以前の動きをしてしまうものです。「あっ」と思った瞬間には既に今まで通りの指が動いていたりして・・・

 

あまりこだわりのない曲の場合は「新しい運指に替えたところで今以上良くなるか絶対的な保証はないし、それに今まで通りの指が動いてしまうから、まぁこのままで良いか。」と諦めてしまうことも・・・。

 

それで心がOKサインを出すのであればそれはそれで良いのですが、そうでない場合、私は以下の方法をすることがあります。

 

1. 16分音符なり、32分音符なり、同じ音価の音符がズラズラと並んでいる箇所であれば、まずは3音ずつ区切ってその3音を出来るだけ素早く弾いて止まり、また次の3音を素早く弾いて止まり・・・を繰り返します。3音区切りですから開始音をずらしていけば3通りの練習が出来ます。(それが出来たら4音単位で4通り、5音単位で5通り・・・と、1区切りの音数を増やす意義が有りそうな場合は増やします。もしも3音でも困難なくらい難しい箇所の場合は2音 ――  付点音符のリズム練習です ――  から始めます。)

 

2. 上記のように同じ音価の音符ではなかったり、両手それぞれ複数個所替えたりした場合は、(その箇所だけを)拍子を変えて『新しい音楽』として練習します。(運指の記憶を書き換えるのではなく、別モノをインプットするつもりで。)

 

上記項番2を例を挙げて説明すれば、例えば8分の6拍子の曲ならば4分の3拍子にしてしまうとか、4分の4拍子の曲ならば小節線を1拍分ずらす(2拍目を第1拍にして2341、2341、2341・・・)とか、それに加えて3拍子にして区切る(234、123、412、341・・・)とか、無限に可能性があります。

 

もちろん音楽性ナンゾあったものではありません。気持ちの悪いことこの上なし! 拍節のアクセント等、今まで〇拍子を弾く上で無意識のうちに付いてしまっていた強弱を意識的に排除しなければなりません。運指の問題以前に四苦八苦すること間違い無し。(実はその苦労が「知らないうちに運指を書き換える」ことにつながるのですが。)

 

そうやって苦労しながら弾く音の並びと音価は元の曲と同じで、そこがミソ。その『気持ちの悪い音の羅列』をゆっくりのテンポから大脳と小脳に『彫り込んで』いくのです。

それがある程度出来るようになったら元の拍子に戻すと「あー、スッキリ! 気持ちイ~イ!」 そして改めて音楽性を踏まえた上で運指訂正していくと、思いのほか短時間で出来上がります。

 

上述のとおり拍子を替えること自体かなり厄介なので、「そんな面倒なことをするくらいなら、元の音楽のままゆ~っくりから練習していくワ。」となるのがまぁ普通でしょう。ですが、小脳の記憶は結構手ごわいこともあります。そんなときの最後の手段として頭の片隅にどうぞ。

 

* * * * *

 

「これぞ私に合う指使い!」と思って弾き込んでいたある日、「やっぱり印刷通りのほうが良かったンだわー!」と気が付いてガックリくることは結構あります。とはいえガックリを十分味わい切るとでも、これで良かったンだ。」といつも思うのです。というのも、最初に印刷どおりの運指を採択しなかった理由は「そだと弾きづらい」ということ。

 

それを別の運指で弾き込んでいるうち、諸々の筋肉や神経が整ってきて、印刷の運指に相応しい手指の状態になってきた、ということになりますなので別の運指で弾き込んだことは無駄ではなく、ちゃんと意味のあることであったワケです。もちろん運指の訂正は無いに越したことはありませんが。

 

曲によっては折角苦労して替えた運指をやっぱり元に戻し、そして弾き込んで弾き込んだある日、ヒョッと別のアイデアを思いついて「あ~ぁ、またまた訂正だー!面倒クサイ!」でもそう言いながらどこかで「やっぱりこれも面白い。」と思っている自分がいます。(ほんの1mmずつでも、可能性1%ずつでも、そうやって理想に近づいてゆくことが喜びです。)

 

そう、運指ひとつとってもント、ピアノは脳トレになります。いえ、脳トレの為に弾いているのではないですけれど。

(な~んて言いながら「あれ? 何をしに2階に上がってきたンだっけ?」なんていつもやっています。)